【不倫の定義】同性同士の恋愛・浮気は法的に「不貞行為」と認められるのか?最新の判例

不倫の定義:同性同士の恋愛・浮気は法的に「不貞行為」と認められるのか?

不貞行為の民法上の定義

 民法第770条第1項第1号は、離婚原因として「配偶者にあることのない者との間に性交をしたとき」を挙げています。この「性交」が、伝統的に「不貞行為」の核心とされてきました。

 しかし、この条文は「配偶者」と「配偶者以外の者」との関係を前提としており、同性間における関係については直接的な規定がありません。このため、同性同士の恋愛や浮気が、現行の民法において「不貞行為」として直ちに不法行為(民法第709条)が成立するのか、また離婚原因(民法第770条)となるのかについては、長らく議論がありました。

最新の判例とその解釈

最高裁判決(2023年7月12日)の意義

 近年の同性カップルに関する司法判断において、特に注目すべきは、2023年7月12日の最高裁判決です。この判決は、地方自治体における同性カップルを夫婦に準じた関係として認める「パートナーシップ制度」の効力に関するものであり、直接的に「不貞行為」の定義に踏み込んだものではありません。しかし、この判決は、同性カップルが「婚姻に相当する関係」を築くことができるという社会的な認識の変化を反映したものであり、間接的に同性間の関係性を捉える上での重要な示唆を含んでいます。

 この判決は、憲法が保障する法の下の平等や、家族に関する権利の保障という観点から、同性カップルを不利益に扱うべきではないという考え方を示唆しました。これは、将来的に同性間の不貞行為に関する法的な判断においても、その関係性をどのように評価するかという議論に影響を与える可能性があります。

過去の控訴審・地方裁判所の判断

 最高裁判決以前にも、同性間の性行為を不法行為と認めるか否かについて、下級審で判断が分かれていました。一部の判例では、異性間の貞操義務に準じる関係性は同性間には存在しないとして、不法行為の成立を否定する傾向がありました。これは、民法が想定する「夫婦」が異性間であることを前提としていたためです。

 一方で、同性カップルであっても、婚姻関係に準ずるような、互いに貞操義務を負うべき関係性においては、その義務違反を不法行為として認めるべきではないか、という議論もありました。しかし、明確に「不貞行為」として認定された判例は、現時点では確認されていません。

「不貞行為」と「不法行為」の関連性

 「不貞行為」は、民法第770条第1項第1号に規定される離婚原因としての「配偶者にあることのない者との間に性交をしたとき」を指しますが、その行為が配偶者のある者にとって、配偶者との婚姻関係を破壊する行為であると認識された場合、「不法行為」(民法第709条)となり、損害賠償請求の対象となり得ます。これは、配偶者のある者との性交渉によって、配偶者の権利(婚姻共同生活の維持、貞操権など)が侵害されたとみなされるためです。

 この考え方を同性間の関係に当てはめる場合、まず、同性カップル間の関係性が、異性間の婚姻関係に準ずるような、互いに貞操義務を負うべき関係性であると社会的に、あるいは法的に認められるかどうかが前提となります。

同性カップルと貞操義務

 現状、日本の法律において、同性カップルに法律上の婚姻関係は認められていません。そのため、民法上の「貞操義務」が直接的に課されるわけではありません。しかし、前述の最高裁判決が示唆するように、同性カップルが「婚姻に相当する関係」を築いていると社会的に認識されるようになれば、その関係性において、互いに貞操義務に類する、相手を裏切らないという道義的・社会的な義務を負うと解釈される可能性はあります。

 もし、そのような「婚姻に相当する関係」にある同性カップルの一方が、第三者との間で性的な関係を持った場合、それは関係性の破綻を招く行為であり、相手方に対して精神的な苦痛を与える可能性があります。この場合、民法第709条の「不法行為」として、損害賠償請求が認められる余地は否定できません。ただし、これは「不貞行為」という法律用語とは異なり、「配偶者」の存在を前提とするものではないため、より広い意味での「共同生活の維持義務違反」や「信頼関係の破壊」といった観点から判断されることになるでしょう。

まとめ

 現行の民法は、異性間の婚姻を前提としており、同性同士の恋愛・浮気が直接的に「不貞行為」として法律に明記されているわけではありません。したがって、厳密な法律用語としての「不貞行為」には該当しないと考えられます。

 しかし、社会における同性カップルへの理解が進み、パートナーシップ制度が普及する中で、同性カップル間にも「婚姻に相当する関係」として、互いに相手への貞操義務に類する関係性を期待する社会通念が形成される可能性があります。そのような関係性において、一方のパートナーが第三者と性的な関係を持った場合、それは「不法行為」として損害賠償請求の対象となりうるでしょう。

 今後の法改正や、さらなる司法判断の積み重ねによって、同性間の関係性と、それに伴う貞操義務や不法行為の認定に関する法的な基準は、より明確になっていくと考えられます。現時点では、判例・法令は、異性間の婚姻関係を保護する枠組みの中で議論されており、同性間の関係性については、その解釈が進化していく過程にあると言えます。