【退職金の財産分与】不倫した夫の「将来もらえる退職金」も離婚時に分け合える?
不倫と退職金の財産分与の関係性
離婚における財産分与では、原則として夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げた財産が対象となります。この「協力して築き上げた財産」には、預貯金、不動産、有価証券、車、そして退職金なども含まれます。では、不倫をした夫の退職金についても、妻は財産分与として請求できるのでしょうか。
結論から言えば、原則として、不倫をしたか否かに関わらず、退職金は財産分与の対象となり得ます。財産分与は、夫婦の協力関係によって形成された財産を清算する制度であり、離婚原因を作った配偶者の責任を追及する慰謝料とは別のものです。したがって、夫が不倫をしたという事実は、退職金そのものを財産分与の対象から外す理由にはなりません。
ただし、不倫が離婚の直接的な原因となった場合、慰謝料請求とは別に、財産分与の割合に影響を与える可能性はゼロではありません。しかし、これはあくまで例外的なケースであり、一般的には不倫の事実は財産分与の額に直接影響しないと理解しておくべきです。
将来もらえる退職金の財産分与
財産分与の対象となる退職金は、「既に支払いが確定しているもの」か、「退職する権利が具体的に発生しており、将来支払われることが確実視されるもの」に限られます。まだ退職の予定もなく、退職金制度も曖昧な段階での「将来もらえるかもしれない」という漠然とした期待は、財産分与の対象とはなりにくいでしょう。
具体的には、以下のようなケースであれば、将来もらえる退職金も財産分与の対象として考慮される可能性が高くなります。
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退職予定時期が近い場合: 離婚時点から数年以内に退職することが確定しており、退職金が支払われる見込みが高い場合。
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退職金規定が明確な場合: 会社の退職金規程が整備されており、退職した場合にいくら受け取れるかが具体的に計算できる場合。
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既に退職金の一部が確定している場合: 勤続年数に応じて退職金の一部が既に確定しており、将来の金額もある程度見通せる場合。
これらの場合、実務上は、「退職時見込額」から、「婚姻期間に対応する部分」を算出し、それを財産分与の対象とすることが一般的です。例えば、婚姻期間が10年で、退職まであと5年、退職時見込額が500万円というケースでは、単純計算で婚姻期間に対応する退職金は(10年 / 15年)× 500万円 = 約333万円となります。このうち、原則として半分が妻の取り分となります。
ただし、将来の退職金は、退職時の会社の業績や個人の勤務状況によって変動する可能性があるため、その点を考慮して、「計算の確実性」が重要視されます。
退職金が財産分与の対象となるかどうかの判断ポイント
退職金が財産分与の対象となるかどうかを判断する際には、以下の点が重要になります。
1. 婚姻期間との関連性
財産分与の対象となるのは、あくまで「婚姻期間中に」、「夫婦の協力によって」築き上げられた財産です。したがって、退職金についても、婚姻期間に対応する部分のみが財産分与の対象となります。例えば、結婚前に勤務していた期間に対応する退職金は、原則として財産分与の対象外となります。
2. 貢献度
財産分与の割合は、原則として2分の1ですが、専業主婦(主夫)のように、家庭を守ることで夫の就労を支え、結果として退職金形成に貢献したと認められる場合には、妻の貢献度が高いと判断され、財産分与の割合が2分の1よりも多くなる可能性もあります。
3. 未払いの退職金
すでに支払われた退職金であれば、その使途が問題になりますが、まだ支払われていない将来の退職金については、その「将来受け取る権利」が財産分与の対象となります。この権利が具体的にどの程度発生しているかが、分与額を決定する上で重要になります。
4. 会社の退職金制度
会社の退職金規定が明確で、退職金が支払われることが確実視できるかどうかも判断材料となります。例えば、退職金制度がない会社や、退職金が支給されるか不透明な会社の場合、将来の退職金を財産分与の対象とすることが難しくなることがあります。
不倫による慰謝料請求との関係
前述の通り、財産分与は夫婦の協力によって築かれた財産の清算であり、離婚原因を作ったことに対する責任追及とは異なります。したがって、夫の不倫が原因で離婚に至った場合でも、退職金は原則として財産分与の対象となります。
しかし、不倫は離婚における「有責行為」にあたるため、妻は夫に対して「慰謝料」を請求することができます。この慰謝料請求と財産分与は、性質の異なる請求ですが、示談交渉や調停、裁判において、「財産分与の割合を調整する」、あるいは「慰謝料の一部として退職金の一部を分与してもらう」といった形で、総合的に考慮されることがあります。
例えば、夫の不倫によって精神的苦痛を受けた妻が、退職金の一部を財産分与として受け取ることに加えて、別途慰謝料を請求するという形も考えられます。あるいは、慰謝料の支払いが困難な夫の状況を考慮し、財産分与の額を若干上乗せする形で、慰謝料の代わりとするというケースも存在します。
重要なのは、財産分与と慰謝料請求は別個の権利であるということを理解した上で、それぞれの状況に応じてどのように主張していくかを検討することです。
退職金の財産分与における注意点
退職金の財産分与は、他の財産と比べて特殊な側面があります。そのため、以下の点に注意が必要です。
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資料の収集: 退職金に関する資料(退職金規定、源泉徴収票、会社からの通知など)をできるだけ多く収集しましょう。
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専門家への相談: 退職金の財産分与は複雑な場合が多いため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。特に、将来の退職金については、その算定方法や対象範囲について専門的な判断が必要です。
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退職金規程の確認: 会社の退職金規程を確認し、退職金の計算方法、支給条件、権利の発生時期などを把握することが重要です。
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早期の対応: 財産分与は離婚成立後でも請求できますが、時間の経過とともに証拠の収集が難しくなったり、時効の問題が生じたりする可能性もあります。できるだけ早期に弁護士に相談し、対応を進めることが賢明です。
まとめ
不倫した夫の将来もらえる退職金についても、離婚時に財産分与の対象となる可能性はあります。ただし、それは退職する権利が具体的に発生しており、将来支払われることが確実視される場合に限られます。婚姻期間に対応する部分が分与の対象となり、原則として半分が妻の取り分となります。
夫の不倫は、財産分与そのものの対象を否定する理由にはなりませんが、離婚原因となった有責行為として、慰謝料請求や、財産分与の割合の調整に影響を与える可能性はあります。
退職金の財産分与は、その性質上、専門的な知識が必要となる場合があります。もしご自身のケースで疑問や不安がある場合は、迷わず弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。